
・天井下地材に使用される構成部材について規格・基準などの説明
作成日:2019年10月02日(令和1年)
最終更新日:2024年12月27日(令和6年)
1.吊り天井とは
鉄骨造(S造)やRC造などでは、見た目や機能性の観点から、床スラブなどからボルトを介して吊り下げる2重天井が一般的に用いられています。この吊り下げられる天井を「吊り天井」と呼んでおり、在来天井やシステム天井(注1)が該当します。「在来天井」は、「在来工法天井」「鋼製下地吊り天井」などと呼称されています。
木造の場合には、吊り木を用いた木材の吊り天井を「在来天井」と表す場合もありますが、ここでは鋼製下地(軽天・LGS)を使った天井下地のことを示します。
(注1)システム天井:Tバーと呼ばれる逆T字型のバー材を井桁に組み、バー材の上にパネルを置く天井の仕様。グリッド型とライン型がある。パネルを固定しないため、取り外しが比較的容易で、レイアウト変更の多い用途(主にオフィス)で用いられている。
2.在来天井の構成
在来天井の構成材は「下地材」(LGS下地・軽量鉄骨天井下地・軽天下地)と「仕上材」に分けられます。下地材は、上層階などの躯体からボルトを吊り下げ、野縁受け・野縁と呼ばれる長尺材を井桁に組むことで構成されています。仕上材は、化粧天井ボード・クロス材・ルーバーなど普段目にする天井の材料です。下地材=仕上材となる場合もあります。
ここでは、JIS規格(JIS A 6517:19形/25形)や標準仕様書に記載されている下地材の構成を中心にご紹介します。
- 19形:屋内で使用
- 25形:屋外で使用
※以降、X方向・Y方向という表現をしますが、天井を平面で見た時の野縁の流れをX方向、野縁受けの流れをY方向としています。
①吊元金具(吊り金具)

「吊元金具(吊り金具)」は、吊元(コンクリートスラブ・C/H形鋼等)に吊りボルトを固定する金具(当社のカテゴリー名)です。上層の床スラブ(コンクリート)に事前に埋め込んだ鋼製インサートが主に使用されています。床スラブに鋼製デッキを用いている場合には、デッキハンガーも使用されます。吊り長さが長くなる場合には、ぶどう棚と呼ばれるC/H形鋼を中間に設け、専用の吊元金具を使用します。
②吊りボルト

「吊りボルト」は、天井材の吊り下げ長さ(天井懐)を調整する部材です。全ねじボルトが使用されていますが、建物が古い場合、両ねじボルトが使われていることもあります。
標準仕様書の規格は、W3/8・3分ボルトです。耐風圧の場合、ボルトの弾性座屈を防ぐためにW1/2・4分ボルトなど径が太いボルトを使用したり、角パイプ補強(□-1.2x19x19等)を行います。
一般的な取り付けピッチはX,Y方向@900程度です。耐風圧の場合には@700程度に狭くすることもあります。
ボルト種類 | 外径 | ねじピッチ |
---|---|---|
W3/8 | φ9+0.3-0 ※ | 1.5875 |
M10(参考) | φ10 | 1.5(並目) |
③ハンガー

「ハンガー」は、吊りボルトに野縁受けを固定するための金具です。ナットで締めつけ固定します。そのナットを上下に動かすことで天井のレベル調整ができます。レベル調整は野縁まで下地が組みあがった段階で行い、平天井の場合は「むくり」を設けます。水平精度など具体的な数値については標準施工要領書などをご確認ください。
【ハンガーの種類】
・ワンタッチ:野縁受けを簡単に取り付けられる
・耐風圧 :鉛直方向(上下)に外力を受けても外れないもの
・防振 :振動の伝達を低減する防振ゴムが付いたもの
④野縁受け(のぶちうけ)

「野縁受け」は、天井面を構成する部材(天井面構成部材)の親材でハンガーに固定されます。「親バー」と呼ばれています。また、C型の断面形状から、「チャンネル・Cチャン」とも呼ばれています。
主要サイズは、C-38(しーさんぱち)と呼ばれる外寸38×12の材で表の種類があります。C-38以外にC-40x20x1.6tなどがあり、たわみ等の条件から選定します。一般的な取り付けピッチはX方向@900程度です。
C38の種類 | 板厚 |
---|---|
CC-19(19形) | 1.2t |
CC-25(25形) | 1.6t |
一般材 | 約1.0t |
SUS材 | 1.2t / 1.5t |
⑤クリップ

「クリップ」は、野縁受けの下側に、野縁を取り付けるための金具です。野縁受け、野縁の種類によってさまざまな形状があります。手で折り曲げることの可能な「通称:軽天クリップ」(折り曲げ式のクリップ)が一般的に用いられています。過去の地震などで軽天クリップが外れたことから、板厚を厚くしボルトやビスなどで固定した「緊結性能」のあるクリップ(写真左の耐風圧クリップ押上式)の採用が増えています。当社では、一部の製品について衝撃試験により緊結性能を確認しています。
⑥野縁(のぶち)

「野縁」は天井ボードをビスで固定するための部材です。クリップを用いて「野縁受け」に固定します。在来天井で使用する野縁は断面がMの形をしているため「Mバー」と呼ばれています。Mバーの幅方向にはS・Wの2種類があり、ボードのつなぎ目(ジョイント部)では互いのボードを同じMバーにビス固定するため、幅の広いWバーを使用します。また高さ方向には19mm・25mmの2種類あり、室内(19形)と屋外/軒天(25形)で区別して使われています。JIS規格品は板厚0.5tですが、0.8tのMバーを製造しているメーカーもあります。一般的な取り付けピッチはY方向@303,@360程度です。
角スタッドやC形鋼を野縁として用いる場合もあります。

部材 | 19形(mm) | 25形(mm) | その他(mm) | |
---|---|---|---|---|
シングルバー Sバー | 記号 | CS-19 | CS-25 | – |
断面 | 25x19x0.5 | 25x25x0.5 | – | |
ダブルバー Wバー | 記号 | CW-19 | CW-25 | – |
断面 | 50x19x0.5 | 50x25x0.5 | 50x25x0.8 |
⑦天井ボード(面材)

仕上げは、ボードで完全に覆う場合と、ルーバーのように部分的に覆う場合があります。ここでは「天井ボード(面材)」について簡単に説明します。
「天井ボード」には様々な規格がありますが、在来天井で一般的に使用されている石膏ボードの主要サイズは910x1820mm(3×6板)、厚みは9.5・12.5mmです。その他、岩綿吸音板(ロックウール吸音板)・ケイカル板・金属パネル板などの材料があります。
天井ボードは、野縁にビスで固定します。ボードとボードのつなぎ目にはW野縁を配置してズレないように固定します。ビスピッチは外周と内側で異なり150・200・250mmといった間隔が一般的です。天井ボードが2層3層と重なる場合には、2層目以降を接着剤で固定します。
写真のような化粧ボードは仕上げを兼ねており、割付で下地材の方向が定まります。一般的には、部屋の短手を親(野縁受け方向)・長手を子(野縁方向)にします。
天井の構成部材の総重量は、照明などの設備機器も含めると一般的には10~20kgf/m2程度ですが、特殊な材料を使った2kg/m2以下の軽い天井、防音室などの用途では60kgf/m2を超える場合もあります。20kgf/m2を超える場合は特記に従ってください。
⑧ジョイント

野縁受けや野縁といった長尺材は、4m・5mといった定尺で工事現場に搬入されます。区画された一つの天井面積が大きければ定尺材をつなげる必要があり「ジョイント金具」が使用されます。ライトゲージ用・チャンネル用・Mバー用など断面形状ごとに種類があります。
天井を組む際、野縁や野縁受けのジョイントが一列に集中しないよう、隣り合う定尺材を1mほどずらし、千鳥に配置する必要があります。
⑨水平振れ止め・水平補強

「水平振れ止め」は、吊りボルト同士を連結し拘束するために設けます。「振れ止め材」と「吊りボルト」を固定する金具を、当社では「振れ止め用金具」というカテゴリーでまとめています。
標準仕様書に従う場合、天井懐が1.5m以上(3.0m以下)において、縦横方向(X・Y方向)に1.8m程度の間隔で水平振れ止め材を配置する必要があります。(吊りボルトは0.9mピッチの為、1.8mつまり2スパンごとに取り付ける。)
「水平振れ止め材」に「斜め振れ止め材」を固定したい場合には、横方向に滑らないようビス固定する金具を選定してください。
⑩斜め振れ止め・ブレース

吊り天井に設ける「斜め振れ止め材(補強材)・ブレース材」は、「上部」は吊りボルト・躯体と、「下部」は野縁受け・追加野縁受け・天井ボードに「金具」を用いて固定します。主な用途は次の2つです。
①天井懐が1.5mを超える際の吊りボルトの拘束
②地震時の揺れを躯体に伝達
①標準仕様書に従う場合、天井懐が1.5m以上(3.0m以下)において、縦横方向(X・Y方向)に3.6m程度の間隔で斜め補強材を配置する必要があります。(吊りボルトは0.9mピッチの為、3.6mつまり4スパンごとに取り付ける。)
②地震などの揺れに対し耐震ブレースを設ける場合、天井の負担面積などから必要耐力を求め、ブレース断面や金具を選定します。
⑪クロス金具

「クロス金具」は、野縁受けの上に「追加野縁受け」を固定するための金具です。「追加野縁受け」は、照明器具などの設備機器を吊るしたり、ブレース材を固定するために設けます。通常、野縁受けに直交させて取り付けます。
天井開口の補強のために追加する野縁受けも「追加野縁受け・補強野縁受け」と呼ばれていますが、こちらは、直接、野縁と固定する材になります。
⑫耐震対策(補強・落下防止)

天井落下による被害を防ぐには、
・接合部を強固にする。(緊結・補強)
・外れても下まで落ちないように、ネットなどのフェールセーフ機構を設ける。(落下防止)
・地震時に天井に作用する水平力を躯体に伝達する。(ブレース設計・壁の設計)
・壁・柱と天井の間にクリアランスを設ける。(挙動の異なる部分の縁を切る)
といった対策があります。下地のみならず、設備機器やボード、周辺環境との取り合いも大切になります。
既存物件の改修等で適した金具がない場合には特注加工にてご対応しております。
3.まとめ
一般的な「天井下地の仕組み」をご紹介いたしました。
吊り天井は、「下がり壁」「斜め天井」「アーチ・ドーム天井」といった様々な形状の形成が可能です。
その他「耐風圧」「耐震」「遮音」仕様にすることがあります。仕様に沿って部材を選定し天井が作られ、普段利用している空間が形成されています。
参考図書:公共建築工事標準仕様書(建築工事編)平成31年版,国土交通省
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